今回の記事について
今回は日本学生支援機構(JASSO)の奨学金についてのお話です。種類や借り方、返済方法、在学中の手続きなどについて細かくお伝えしようと思います。
奨学金は学生本人の借金になるため、その利用に否定的な声も多いです。でも、各家庭の経済状況や資産運営の考え方にもよるので、適切に利用すれば決して悪いものではないと考えています。
お金を借りるということで手続きもなかなか細かく、煩雑になっています。
今回の記事で「これはどうなるの?」というちょっとした疑問や少し特殊な事情の解決についてもお力になれるかと思います。
うちの三男グレーゾーンボーイです。
私は地方在住の50代。子どもの教育に関わる仕事を週2回ペースでしている”つつじ屋”といいます。
家族:だんな 定年間近の会社員
長男 大学生 勉強が大好き
次男 大学生 自由が大好き
三男 高校生 ウルトラマン大好き
三男は発達障害グレーゾーンで境界知能の持ち主です。
このブログでは、この三男にまつわるエピソードや困り事などを、グチ多めでつづっていきたいと思っています。よろしくお願いします。
教育費は大変高額です
子育て世帯にとって子どもの教育費は悩みの一つ。
子ども1人につき高校までずっと公立で300万円、すべて私立だと1300万円ほどが必要と言われます。これは学校の授業料だけを考えた場合です。つまり、学習塾や習い事などの費用は含まれません。
さらに大学に進学すれば国公立で約300万円/4年、私立文系で約450万円/4年、私立理系で約600万円/4年、私立医学部だと約1700万円/6年かかります。また大学から一人暮らしをするともなれば、その必要経費は跳ね上がります
その費用を計画的に貯めていたり、収入に余裕があれば別ですが、子どもが何人かいればすべての費用を用意するのも難しいこともあります。
そこで考えるのが奨学金や教育ローンの利用です。
わが家は3人兄弟。2024年1月時点で長男は大学4年生(4月からは大学院)。次男は大学2年生(4月からは3年生)。グレーゾーンボーイの三男は高校1年生(4月からは2年生)。上の2人は国立大学ですがそれぞれ一人暮らしです。学費は私立よりはかかりませんが、一人暮らしにはやはりお金がかかります。
そこで、上の2人にはJASSOの奨学金を借りてもらい、三男は日本政策金融公庫から借り入れました。
このふたつの違いは、奨学金は学生本人の借金、日本政策金融公庫は親の借金というところです。(日本政策金融公庫については別記事に詳しく書いてありますのでそちらを参考にしてみてください。)
↓日本政策金融公庫の記事はこちら↓
それでは今回はこのJASSOの奨学金について説明していきます。
奨学金の種類
JASSOの奨学金は「給付奨学金」と「貸与奨学金」があります。
「給付奨学金」
「給付奨学金」は原則返済不要です。学力基準(高校での評価平均3.5以上)と家計基準があります。
また、家計基準には収入基準(住民税非課税もしくはそれに準ずる世帯)と資産基準(資産合計が生計維持者1人の場合1250万円、2人の場合2000万円未満)があります。
支給される額は世帯の収入、国公立か私立かによって異なります。約10000円から約80000円が毎月振り込まれます。
「貸与奨学金」
一方、「貸与奨学金」は返還義務があります。また、貸与奨学金には第1種奨学金と第2種奨学金があります。
まず第1種奨学金についてお話します。
こちらは無利子で借りることができます。学力基準は高校での評価平均が3.5以上であるか、住民税非課税世帯や生活保護世帯であって学修意欲があるかのどちらかです。家計基準は、JASSOの定める収入基準以下であるか、住人税非課税世帯であるか生活保護世帯であることとなります。
借りられる額は国公立か私立か、自宅通学か自宅外通学かによって異なりますが、20000円から64000円が毎月振り込まれます。
次は第2種奨学金についてです。
こちらは有利子になります。在学中には利子はつかず、貸与終了時に決定した利率が適用されます。学力基準は”平均水準以上”。家計基準はJASSOの定める収入基準以下となります。借りられる金額は20000円から120000円。この間の希望の額を選べます。
第1種奨学金は、無利子なだけあって、学力基準も家計基準も条件が厳しくなっていますが、第2種奨学金はわりと多くの人が利用できます。また前述の給付奨学金と第1種奨学金の併用、第1種奨学金と第2種奨学金の併用もできます。第2種奨学金も有利子ではありますが、在学中は利子がつかない点、貸与終了時に決定される利率も低いので、他のローンよりは負担は少ないと言えます。
奨学金の借り方
JASSOの奨学金を借りる方法として、「予約採用」と「在学採用」の2種類があります。
「予約採用」
予約採用とは、高校在学中に申請をして借りることです。
奨学金の手続きはなかなか煩雑です。学生本人がすることも多いですし、保護者や保証人が自筆で記入する書類もあります。例えば子どもが遠方で一人暮らしになった場合、在学採用だと自分ひとりですべてやることになります。そのうえ、自署をもらうために書類を親元に送ったりと書類のやり取りも結構大変。その点、予約採用なら親子一緒に手続きをしたり書類をそろえられるので、安心感はあります。
高校3年生になるとすぐ、学校から予約採用募集のお知らせがあります。
その時に書類をもらい、5月中くらいにスカラネット(インターネット)から申請をします。スカラネットからの入力、学校への書類提出、JASSOへマイナンバー関係書類を提出します。ここまでが第一段階。
そして、10月頃になると採用されたかどうかの通知が来ます。採用されると「採用候補者決定通知」というものが送られてきます。この通知が来たらひとまず安心です。
さらに4月になって、進学先の学校に必要書類を提出し、スカラネットからJASSOに進学届を提出します。入学直後に学校から必ず案内があるので、注意しておきましょう。進学届を出さないと、奨学金は振り込まれません。
これらの手続きが完了すると、奨学金の振り込みが始まります。最初の振り込みが5月や6月になるので注意が必要です。その間の生活費などはあらかじめ用意しておきましょう。最初の振り込み日には、4月からの分がまとめて振り込まれます。
その後、学校が定める期限内に返還誓約書を提出します。ここまでで一通り終了となります。
このように、奨学金を借り始める最初の年は手続きが次から次へとあります。学校からのお知らせに注意して、忘れずに手続きを進めましょう。
「在学採用」
在学採用は大学に進学後に申請する方法です。入学直後に学校から必ず案内があります。
手続きの流れや提出書類は予約採用と一緒ですが、入学後の申請になるので採用が決定しても初回の振り込みが7月くらいになります。それまでの生活費などの必要経費は用意しておきましょう。
また、子どもが遠方で一人暮らしをしていると、自署が必要な書類のやり取りや入力事項の疑問点など、厄介なことが多いです。お金を借りるという重要な手続きなので、入力間違いなども大問題。
なので、奨学金を借りようと思っているのなら、予約採用をお勧めします。採用が決定しても、進学時に辞退することもできるので、入学後にバタバタしないためにも是非予約採用を。
在学中の手続き
在学中は年に一度「奨学金継続願」をスカラネットから提出します。
時期は12月末から1月初め。これも学校から必ず案内があります。入力するだけなのですぐにできますが、忘れると次年度の奨学金は振り込まれなくなります。年末年始で何かと忙しくする時期、後回しにしているとあっという間に期限がきてしまいます。案内があったらすぐに手続きをしましょう。
返還方法と手続き
卒業・退学などによって貸与が終了すると返還が始まります。返還が始まるのは貸与終了の翌月から数えて7か月目からです。
卒業の時期になると学校から案内があるので、返還用振替口座(リレー口座)の登録手続きをします。用紙を銀行窓口まで持っていくことになります。(ネットでできる場合もあるようです。)奨学金が振り込まれる口座と同じでも、必ず手続きが必要です。
第2種奨学金の貸与を受けていた場合、貸与終了時に利率が決まります。卒業時まで利率が分からないのですが、年3.0%を越えることはありません。
例えば、第2種奨学金で月に50000円、4年間貸与を受けた場合、貸与総額は240万円。毎月の返還金額は13731円、それを180回(15年)、返還総額はおよそ247万円となります。(利率0.369%、2024年JASSOホームページでのシミュレーションによる)
また、返還が困難になった場合には救済制度があります。減額返還と返還期限猶予です。
減額返還は月々の返還金額を1/2、あるいは1/3に減らすことです。返還期限猶予は月々の返還を先送りにすることです。
いずれも返還総額が減るわけではないので、計画的に返還しなければなりません。
また、大学・大学院などに学生として在学している場合は ”在学猶予” がうけられます。学生の間は返還を先送りにできます。在学猶予は進学した学校を通して在学届を提出します。進学したらすぐに学校に問い合わせましょう。
機関保証と人的保証
融資の契約で問題となるのが保証人をどうするのか、です。連帯保証人を引き受けるのは誰もがあまり気が進みません。それが親族であっても同じです。依頼する側も心の負担は大きいです。
そんな時に利用したいのが「機関保証」です。これは保証機関に保証を依頼し、連帯保証を受ける制度です。保証を受けるためには一定の保証料の支払いが必要となり、毎月の奨学金の貸与額から差し引かれます。(目安として、第2種奨学金で月50000円の貸与を4年間受ける場合、毎月約2000円が差し引かれます。)
もちろん連帯保証人を引き受けてくれる人がいるのなら人的保証で問題ありません。この場合、保証人が自署・押印する書類や印鑑登録証明書などを提出することになります。
こんな場合はどうするの?
長男は高校で予約採用を申請して採用候補になりましたが、浪人を選びました。そして、浪人中に再度予約採用を申請し、貸与を受けました。その後大学院に進学。そちらも大学4年時に大学院での予約採用を申請しました。
次男はある大学を1年で退学。この時も予約採用で申請し、1年間貸与を受けていました。そして違う大学へ入学。そこで在学採用を申請し、貸与を受けています。
ふたりともノーマルパターンと少し違っていて、当然やることもたくさんでした。そんな経験をもとに、少しイレギュラーな状況のお話をしようと思います。
4年制大学卒業後、大学院に進学する場合
大学4年の10月頃、大学から大学院での奨学金の予約採用の案内があります。入学する大学院が決まっていて、大学院でも奨学金の貸与を受ける予定ならば、案内に従って手続きをします。同時に大学で貸与を受けていた分の返還リレー口座の登録用紙も配布されますので、口座を登録します。
大学院進学後に在学猶予の申請をスカラネットから行うことで、在学中は返還が先送りされます。在学猶予の手続きをしないと、大学院在学中であっても大学4年間分の返還が始まってしまいますので、気を付けましょう。
在学猶予の申請をした場合、実際の返還は大学院卒業後の10月からとなります。
大学中退→別の大学へ入学した場合
中退した学校の時貸与を受けていた奨学金は、何の手続きもしなければ退学後半年くらいで返還が始まってしまいます。JASSOの奨学金は学校ごとで扱われるので、学校が変わればそのまま継続することができず、いったん貸与終了となるのです。なので、退学手続きと同時に前述のリレー口座の登録をすることになります。
しかし新たに違う大学に入学した場合、入学した大学を通して在学届を提出することで、その大学を卒業するまで返還を先送りすることができます。
新たに入学した大学でなるべく早目に提出しましょう。なお、このパターンはあまりないので、学校から全員に周知の連絡があるわけではありません。入学したらすぐに自分で学生課などに問い合わせましょう。
高校で予約採用で採あ用候補になったが浪人した場合
高校在学中に予約採用を申請して採用候補者となったが、浪人することになった場合はどうなるでしょう。
奨学金は新たに入学した学校に「進学届」を提出し、スカラネットに入力することで実際に貸与が受けられるようになります。浪人したということは「進学届」を出せないので、その時点で辞退したということになります。辞退するための特別な手続きはありません。
では、浪人したがまた次年度に貸与を受けるための予約採用を申請することはできるのでしょうか。これはできます。卒業した学校に早目に(4・5月くらい)問い合わせ、申請のための書類を受け取ります。卒業後2年以内であれば予約採用の申請ができます。
当然高校から個別に連絡はないので、希望があれば自分で問い合わせましょう。
まとめ
以上、JASSOの奨学金について、大まかにお話してきました。
重ねて言いますが、奨学金は借金です。しかも学生本人の借金です。必ず返還しなければならないこと、子ども名義の借金になること、いくら借りたら返還は何年かかって月にいくら返すことになるのか、子どもとしっかり話し合って検討しましょう。
学費、生活費、すべてを奨学金で賄おうと、多額の貸与を受けるのは慎重に。だからといって、まったく奨学金を利用しないでアルバイトに明け暮れるのも考えものでしょう。少し厳しい言い方になるかもしれませんが、本当にそうまでしてその大学に行く意味があるのか、立ち止まって考えることも必要かもしれません。
もちろん、明確にその大学で学びたいことがあるのなら、奨学金は大きな助けにもなってくれると思います。実際わが家ではふたりがJASSOの奨学金のお世話になっているのですから。
わが家の長男は卒業後の返還について考えてはいるようです。次男はおそらくまだ何も考えていないかと。ふたりにはものいりのこの時期に奨学金を利用してくれたことに感謝しております。なので卒業後、何とか少しでも返還の援助をしてあげられたらとも思っています。実行できるといいのですが・・・。
奨学金の利用についてはやみくもに恐れることなく、だからといって過剰に頼ることもなく、自分たちでその制度をきちんと理解して自分事として考えましょう。大学で学ぶということの意味をきちんとわきまえて。学ぶことは贅沢なことです。学べることに感謝の気持ちも忘れずに。
私(つつじ屋)が運営している子ども向け学習塾の記事です。開業してみたい方はぜひお読み下さい。