今回は療育手帳を持てない発達障害(境界知能)グレーゾーンの子どもの将来(仕事・お金)についてお話します。
グレーゾーンの子どもって一見普通。少しくらい勉強ができなくても、一人で生きていくことは問題ないのでは、と思われがちです。でも、実際はそれが結構難しいのです。
本当は支援が必要な場合でも、手帳が持てないために何の支援も受けられません。
ということは、何とかひとりで生きていかなければならない。
そのためにはどうしたらいいのか、親はその行く末に不安を感じるのです。
高校はどうするのか、就職はできるのか、親が亡くなったらどうなるのか。
私自身の経験と今後やってくるであろう様々な不安要素についてお話ししていこうと思います。
- 療育手帳を持てないとは
療育手帳がないと、特別支援学校や障害者枠での就職ができず、通常の一般就労を目指さなければなりません - 学力と就労の課題
学力や能力の不足により、一般就労についたり長期的に安定した仕事に就くことがむつかしい - 進路の選択肢の狭さ
手帳がないと特別支援学校に入れないので、高等専修学校や私立高校の進学が考えられますが、経済的負担や能力的な限界も見えてきます - 経済的な不安
「一人で生きていけるだけの経済力」をつけることができるのか?特に一般就労の場で成功するかどうかや、就労支援施設も限られている現実
親亡き後、グレーゾーンの子どもたちがどのように自立していけるか?という将来の不安が大きなテーマです
息子は働けるのかなぁ…。
私は、地方在住の50代。子どもの教育に関わる仕事を週2回ペースでしている”つつじ屋”といいます。
家族:だんな 定年間近の会社員
長男 大学生 勉強が大好き
次男 大学生 自由が大好き
三男 高校生 ウルトラマン大好き
三男は発達障害グレーゾーンで境界知能の持ち主です。
このブログでは、この三男にまつわるエピソードや困り事(+ちょっと愚痴)などを通じて、少しでもグレーゾーンのお子さんを持つお父さん・お母さんのお役に立てるような記事を書かせて頂きます。
療育手帳をもてない、発達障害・境界知能グレーゾーン
- ”手帳がない” とは、”支援学校から障害者枠での就職”はできない、ということ
- 手帳はもてないけど、じゃあ学力はあるの?
”手帳がない” とは、”支援学校から障害者枠での就職”はできない、ということ
中学生になると学力の差は残酷なまでに明白になります。
わが家の三男の場合、テストの順位は毎回ほぼ最下位でした。
おそらく圧倒的に。私は、三男が普通級でいることに、不安というかある種申し訳なさも感じていました。先生の手間を増やしているのではないか、クラスマッチなどではみんなの足を引っ張るのではないか。
そんなモヤモヤを担任の先生に相談したところ、担任の先生や学校としては三男が普通級にいることは全く問題ない、ということでした。また、普通級なのか支援級なのかはあくまでも保護者が決めることなので、学校側から支援級に移ってくれと言うことはない、ということも言われました。
三男はクラスのみんなが大人だったこともあって、勉強は全然できない、ちょっと変わった不思議な奴、くらいの立ち位置で過ごすことができていました。なので、三男がクラスで苦しい思いをしていたということではありませんでした。
ただ私としては、全く分からない授業を毎回聞き続けるのはしんどいのではないか、と思っていました。
支援級ならばもっと三男のレベルにあった学習ができ、のびのびできるのではないかと思っていたのです。実際、支援級の先生からも、「○○君、こっちおいでよ。そんなに頑張らんでいいよ。」といつも言われていました。
三男 君、支援級においでょ。
ぼくは普通級でだいじょうぶ!
そんなことから一度検査を受けてみたらどうでしょうということになり、中学2年生の4月、療育手帳を受けるための検査を受けました。
2時間半かかったうえ、通常は皆さんが受けるはずの最終的な検査までたどり着かなかったのに、療育手帳の交付を受けることはできませんでした。
そして、発達にでこぼこがあること、自分が何が分からないのかも分からないこと、分からないと言葉にできないこと、などの特徴があることの説明を受けました。
正式な書面もありませんでしたが、電話で告げられたIQは80。
あれほどの時間がかかっていたのに80もあるとは。この結果を告げられるだけで、こちらの困り感へのフォローや今後の相談先などの紹介はありませんでした。まあ、あくまでも検査を受けるだけの場だったので、仕方ないのかもしれません。
療育手帳の交付を受ける対象ではないということは、喜ばしいことかもしれません。
しかし、支援の必要はありません、自分で頑張ってください、ということになりますね。療育手帳をもらって、支援を受けながら暮らしていければいいなと考えていたので、正直へこみました。ずいぶん身勝手な考えかもしれませんが。
小学校低学年の親御さんは療育手帳の対象外だと喜ばれます。
ひとりでは生きていくのが困難だから手帳を申請したのです。楽をしたいわけではありません。
わが家の三男位の能力の方ってたくさんいると思います。その方たちは何とか頑張っているんだろうから、三男も何とかするしかない。それも分かっています。
それでも、三男のように、どの仕事をするにしてもかなりのフォローと周りの理解が必要と思われる者にしてみれば、何の支援も得られないことは、甚だ心許ないことです。
ここがグレーゾーンの苦しいところです。
手帳はもてないけど、じゃあ学力はあるの?
中学校時代のテストの成績は、同学年で毎回ほぼ最下位。
・田中ビネー式の検査で IQ80
・WICSの検査ではIQ74位
・中学校時代のテストの成績は、同学年で毎回ほぼ最下位
・幼いころ ”特定不能の広汎性発達障害” という診断をうけています。
中学1年生の頃は三男も分からないなりに頑張ろうと思っていたようです。
しかし、中学2年生、3年生と学年が上がるにつれ、学習の内容は難しくなり、三男の手には負えないものになりました。そうなると、授業中の集中力も下がり、もともとよくなかった成績も下がる一方。
中学1年生の頃は私立の普通科の高校への進学を考えたこともありましたが、それは無理だとすぐに路線変更。私立高校を受験するためには内申点が全く足りませんでした。
私共の地域では、大学進学を目指すには公立高校へ進むのが一般的です。
私立高校へ進んだとしたら特進科といったコースを選びます。私立高校は公立高校の滑り止めとしての役割も持っています。そういう私立高校の中でも最も偏差値が低い学校を希望したとしても、三男の内申点や学力では全く太刀打ちできませんでした。
中学2年生の夏休みからいろいろな高等専修学校に見学に行きました。
自宅から離れた所にここはいいなあと思える学校があったのですが、三男の能力的に一人で電車に乗って乗り換えて、ということが難しかったのです。遅延したり運休したりでいつもとパターンが変われば、もう絶対無理。できるまで私が付き添うというのも現実的には無理。なのでこの学校は諦めました。
自宅から近い所は2か所あります。どちらも学習内容は難しい。専門分野の学習も三男にとっては高いレベルのものでした。
専修学校も厳しいのではと思い、やはり特別支援学校に入れないかと、中学3年生の夏休みに担任の先生に橋渡しをお願いし、ふたつの特別支援学校に見学に行きました。
しかしここで言われたのは、やはり療育手帳は必要だということ。精神の手帳でもギリギリいけるが、医師の診断書も同時に必要、ということでした。受験することはできても、まず合格はできないということでした。
三男の能力を考えれば、本当は支援学校で過ごさせてあげたかったです。とはいっても、支援学校への入学を望む生徒さんは非常に多く、三男のようなグレーゾーンボーイはあきらめるしかない。
ぼー、、、。
この子はやっぱり支援級へ行かせたい…。
ということは、当然就職も一般就職。
定型発達の人たちと同じ条件で働かなければなりません。グレーゾーンで苦手なことやできないことが多いです、なんてことを考慮してくれるところはおそらくない。
実際の三男は、努力不足とかではなく、知的にも通常より低い境界知能に当たるので、能力的に本当に難しいことが出てくると思います。そうなった時、三男はどういう処遇を受けるのか、私たち親は何ができるのか。
一般就労の難しさと、就労支援支援施設「A型 or B型」
- 一般就労の難しさ、非正規や契約社員のかたが多い世の中
- 就労支援支援施設「A型 or B型」はどうでしょう?
一般就労の難しさ、非正規や契約社員のかたが多い世の中
ただでさえ非正規や契約社員として働いているかたが多い世の中です。
雇用する側からしても、使える人材、即戦力がほしい、というのは当然のところです。
三男のように、手帳を持っていなければ、普通に働ける人として受け取られます。
でも、実際に仕事をしてみると先輩・上司から「あいつはできないから・・・」「え、さっきいったよね!」「これ出来てないの?」「え!え!え~!」という事態になることが予想されます。
あっ、あれ、やっといた?さっき頼んどいたやつ!
え、あの~、その~
今からやろうと~、、、(小汗)
はっ?さっき言ったよな(怒)
まだ、やって無いのかよ!
うっ・・・。(涙)
えええ~、 もういい加減にしろー!(ため息)
そうなった時、そこで働き続けることができるのか、三男はそれでも大丈夫なのか・・・。
三男を見ている限り、決まっていることや単純作業はできると思います。ただ、その場の状況を判断して自分で考えて動くことは難しいです。運よくそういう仕事に就けるのか。就労支援施設ならそういった所は多いと思われますが、まずは一般就労で探すことになるのかもしれません。
そして、単純作業ができるとはいえ、覚えるまでには人の倍も3倍も時間がかかります。その間、その職場は三男の成長を待ってくれるでしょうか。・・・ふつうは無理ですよね。
それよりなにより、”一人で暮らしていける収入のある仕事” に就くことができるのか、大きな問題です。
就労支援支援施設「A型 or B型」はどうでしょう?
前で少し触れた就労支援とは、就労継続支援施設A型とB型があります。
A型は雇用契約を結ぶため、最低賃金が保証されます。
B型は雇用契約を結ばないため、それぞれに合わせた勤務形態がとれますが、賃金は低く設定されています。
A型ならしっかり稼げそうと思われるかもしれませんが、実際は雇用主が社会保険に加入しないために、勤務時間を制限されたりすることもあるようです。つまり、健康保険料や国民年金保険料は自分で納めることになるということです。これは雇用先の対応によるので、事前に細かく聞いておく必要があります。
ということは、やはりできれば一般就労が望ましいですね。
一人で暮らしていくには、当然のことながら家賃、食費、光熱費などがかかります。社会保険を完備した会社で正規雇用をしてもらえればいいのですが、そうでなければ国民年金保険料や健康保険料も自分で払い込まなければなりません。そうなると・・・月10万円でいける?・・・・。いや、絶対いけない。
厚生年金に加入してなければ老後に受け取れる年金も本当に少ない。グレーゾーンボーイの三男がコツコツ貯金するというのもあまり想像できません。もう詰み。
この ”一人で暮らしていけるだけの経済力をつける” ということが、発達障害グレーゾーンのお子さんを持つ親御さんの大きな目標であると思います。
おそらくは親の方が先に亡くなります。行政からの支援のないグレーゾーンの子供たちは、親亡き後、自分ひとりで生きていかなくてはなりません。
重要な”お金”の問題とグレーゾーンの子供の将来 まとめ
その時に重要なのがやはり ”お金” です。
もちろん、そのお金を管理する能力や日常生活の様々なことをこなしていくスキルも欠けているので、そこも問題ですが、”お金がない” と本当に困ってしまいますよね・・・。
なので、親としては ”一人で暮らしていけるだけの経済力をつける” という目標に向かって、進路を考えていくわけです。
でも選択肢は多くありません。”これなら絶対大丈夫” ”100%満足!”という進路はもしかしたらみつからないのかもしれません。
今三男が通っている高等専修学校では、3年生の時の評定が2.7以上ないと学校からの推薦での就職活動ができません。三男は勉強は本当に無理なので、2.7という数字はほぼ不可能かと。
そうなると、自分でハローワークなどで一般の人たちに混ざって就職活動をする必要があるそうです。(先生談)
この学校も、中学3年生の時にさんざん考えて、ここなら大丈夫かなと思って決めた学校です。
それなのに、あれほど考えたのに、三男の進む道は険しいまま。「働くのは厳しいから甘えてたらダメだよ。」と学校の先生は言います。
それは分かっている。甘えさせるわけではなく、三男が働ける仕事をみつけたいだけ。それがどれほど難しいことか。
後日談
厳しいお言葉をかけてくれていた高校(専修学校)の40代後半の担任の先生でしたが、学校とトラブル(給与関係)になり、24年の夏休み明けに急にお辞めになりました。
今にして思えば「働くのは厳しいから甘えてたらダメだよ」との言葉は、先生自身に向けた言葉だったのかなぁと?考えてしまいます。
話が少し脱線してしまいました。
ただ正直、どうにもならないんじゃないかと思うこともあります。
私自身が周りのいろんな考えや意見を受け、三男本人や二人の兄の将来を考えると、苦しくてとても辛くなる時があります。
それでも ”より三男に向いていると思われる” ”より目標に近づける” 道を見つけていかなくては、と思っています。
なんとか、
一人で暮らしてもらわないと
(私もおばさんだし…涙)
ま、お金は”株”で儲けるのが
一番かなぁ。。。(損ばかり)
↓こちらはグレーゾーンの子どもに向けて書いた読書感想文の一覧です。
生まれてから~保育園までのできごと
↓こちらの記事は、生まれて間もないころのお話です。
グレーゾーンの三男にはこんな「あるある」な特徴もありました。
保育園時代に気になっていたことの記事を書いてみました。よろしければお読み下さい。
【発達障害】グレーゾーンの子供のひどいいびきは、アデノイドによる睡眠時無呼吸症かも?治療で劇的改善!発達にも影響!?治療費は?
小学生時代
こちらは小学1年生、小学校でおもらしばかりしていた頃のお話です
小学1年生、勉強やおもらし、のどの手術(アデノイド除去)について書いてます
小学4年、普通級の子どもさんと上手くコミュニケーションが取れなかったお話です。
中学生時代
↓療育手帳の取得を申請しても、交付を受けることが叶わなかった時のお話
↓高校(専修学校)入学までの紆余曲折
↓義務教育の終わりが見えはじめ、将来について考えてたころのお話
進路と将来
↓中学生になって支援級と普通級のどちらが良いかを考えてみた記事
↓体調の悪さを誰にも伝えられない不安について考えた記事
↓高校(専修学校)入学までの紆余曲折
↓こちらは日本政策金融公庫で借りた学費のお話です↓
高校生時代
↓こちらは高校(専修学校)へ入学してから初めての中間テストの結果です。
↓こちらは”専修学校各種学校連合会”についての記事です
↓こちらの記事では、お金の問題についてつつじ屋のだんなが書いています。。。
出典:文部科学省公式サイトより